お墓系女子のつれづれ

墓石業界で働く女子が日々考えていることをつづっています。

お墓の引っ越し、その意外な理由とは。

最近、田舎のお墓を閉じて、アクセスの良い都会へお墓を移すお墓の引っ越し(改葬)が急増しています。改葬をする理由の多くは、「田舎のお墓にお参りに行くのが体力的に厳しくなってきた」「お墓の後継ぎがいない」といった理由なのですが、意外な理由でお墓を引っ越す人もいます。

その理由とは、「かつて首都圏の郊外にお墓を購入したが、今となってはお参りに行くには遠いから」。遺骨を入れていないお墓を更地にして返還している人までいるのですから、驚きです。

なんでそんなことになったのか、調べてみたら面白くなってきてしまったので、ご紹介したいと思います。

「お墓が足りなくなる!」と言われた時代があった

バブル景気による地価高騰が続いたことにより1980年代後半から、「東京での墓需要に対する供給が追い付かなくなる」と言われるようになりました。これを受けて、地価の安い神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県等の郊外に造成された霊園を購入する人々が増えていきます。

購入するのは、当時の50代後半から60代。このころの調査によると、「定年退職時にお墓を購入する」人が最も多かったのだそうです。この頃の定年は60歳なので、みなさんまだまだ元気。自動車での外出にも何ら不安を感じることなく、「高速道路に乗って車で1時間ならお参りできるよね」という感覚だったのでしょう。実際、この頃はまだ「遠くても安いお墓」を希望する人の方が多かったのです。

想像を超える「お墓」の変化

しかし、時は令和元年。30年の時を経て、お墓を取り巻く状況は様変わりしました。

大きな変化のうち、一つはお墓の小型化と低価格化。もう一つは、都心のお墓の増加です。

前者について、1990年代に入ると、バブルが崩壊し失われた10年が20年になり…と長い不況に見舞われます。それにより、墓地が売れなくなっていきます。そこで霊園開発業者は、価格を下げるために小さな区画の多い霊園を造成するようになっていきます。それにより、以前よりも安価に墓所を購入できるようになります。かつては、2㎡~3㎡が当たり前だった墓所が1㎡の区画が主流に、そして現在では都心の墓所では0.22㎡というほどに小さな区画まで登場しているのです。

墓所が小さくなれば、そこに建てる墓石も小さくなるので、さらにお墓の価格が下がっていきますね。結果、現在では東京都内でも100万円第で外のお墓を買うことができなくはない、くらいになりつつあります。

一方、後者の主役は「自動搬送式納骨堂」。この登場と普及が、お墓を取り巻く状況を大きく変えました。

自動搬送式納骨堂は、一つのビルの中に数千~一万基の厨子を収納しており、参拝口で自分の厨子を呼び出すと機械が自動的に参拝口まで運んできて、遺骨の前でお参りができる、というもの。このタイプの納骨堂であれば、建設に必要な土地も霊園ほど大きくなくて良いので、近年、都内では建て替えとともにこの形式の納骨堂を採用するお寺が増えてきました。

その結果、都内では現在十数か所このタイプの納骨堂が販売されており、お墓の供給過多と言われるようになりました。価格も都内東部を中心に低価格化が進んでいます。

 

 

いうなれば、「お墓の買い替え需要」がある一定量ある、ということですね。

考えてみれば、家も一生モノの買い物と言われていますが、最近では子供が独立して夫婦二人になったので家を売ってマンションに買い替える人が少なくないことを考えれば、お墓も家族の人数や状況に合わせて買い替えるのは、普通のことと言えるでしょう。