お墓系女子のつれづれ

墓石業界で働く女子が日々考えていることをつづっています。

激変する東京のお墓事情。

東洋経済オンラインで、こんな記事を発見しました。 

toyokeizai.net

これは、週刊東洋経済が「相続税対策特集」を組んだ際の告知として公開されたもののようなのですが、内容を読むと、

  • 基本的に外墓地が前提。
    お墓のお金として現金で保有していると相続税がかかるが、お墓には相続税はかからないので、現金で持っておくなら、お墓を建ててしまった方が良い」と書かれています。
  • 必要な金額が高い!「都内なら平均315万円」「広島県なら200万円を下回っている」とあります。

って感じです。

この記事、ずいぶん前のもののように思われますが、実は、2012年6月29日公開。そう、10年経っていないんですよ。

「十年一昔」と言いますが、ことお墓の世界に関して言えば、もはや10年は遠い昔。私も、まさかお墓の市場が今のようになっているなんて、入社当時には考え付きませんでした。

IT技術の進化の早さを、犬が人より成長するのが早いことに例えて「ドッグイヤー」と呼びますが、お墓もそれに近いものがあると言えるのではないでしょうか。

イマドキの技術と、昔からある供養の世界の変化が同じぐらい早いなんて意外ですが、これが21世紀ということなのでしょうね。

では、お墓の「何」が変わったのか

今となっては、都内でお墓に300万円払う、という人はごく少数派です。おそらく青山霊園または都心の名刹にお墓を持ちたい人でなければ、ここまでお墓にお金をかけることはないでしょう。 一体、10年もしないうちに、何がここまで変わったのか。私の経験で感じたことを3つにまとめてみました。

  • お墓の種類の多様化
    これが一番大きいと言ってよいでしょう。今は、いわゆる墓石を建て、代々継いでいくタイプのお墓以外に、遺骨が入った箱(厨子)を搬送機が参拝口まで自動的に運んでくる自動搬送式納骨堂、永代供養墓、樹木葬、自然葬、散骨等、さまざまな埋葬の形が世間に知られるようになってきました。
    核家族化・少子化が進む現代の家族にとって、これらの多くは「後継ぎ不要・永代供養付き」であるため、「子供がいない」「子供が嫁いでしまい、お墓を継ぐ人がいない」人達にとって、「自分が亡くなった後のお墓」の悩みを解決できるお墓として、多くの人から選ばれるようになりました。
  • 懐事情の変化
    最近は、都内でも「お墓の予算は100万円程度」という人が多数派です。このように思う理由としては、超高齢化が進む現代において、闘病や介護等の負担が増え、お墓にまでお金を回せないと考える人が増えているように思います。
    一方「子供達にお墓の負担をかけたくない」と考え、自分たちの代で墓じまいをし、お墓を永代供養がついているお墓にする人も増えています。背景には、自分達が現役の頃に比べ、子供たちの可処分所得が少ないことを認識している人が増えてきたことです。こうした人達にとって、上に挙げたお墓は、従来のお墓のようなお墓参り時の掃除もいらず、かつ価格が安く管理費も不要なところが多いです。ニーズにマッチするお墓があるのであれば、それを選ぶ人が増えることに不思議はありませんし、それらの価格が安ければ、お墓にかける費用も自然と下がっていくものです。
  • お墓に対する価値観の変化
    何気に大きいのはここなのではないかと思います。かつては、大きなお墓を持つことは一つの成功者の特権でした。政治家でも、一代で日本を代表するような企業を立ち上げた人も、芸能人も、古刹・名刹に立派なお墓を作っていたものでした。それらを見て、一般人も、できれば大きなお墓を持ちたいと考えていたように思います。しかし、最近では故・市原悦子さんのように、生涯第一線で活躍していた女優でありながら、お墓は樹木葬という方がいらっしゃるように、大きさや立派さよりも、自分が良いと思えるものを選ぶ傾向がお墓でも強くなってきているように、感じています

「歌は世につれ、世は歌につれ」と言いますが、「墓は世につれ、世は墓につれ」とも言えるかもしれませんね。